きらきらとひかる一番星は、誰よりも明るくて、そしてどんなものよりも遠いこと。それは、六等星の自分が一番分かっていました。
甘ったるい色をしたテディベアも、自分の双眸の色とおそろいな、 エメラルドのリボン。全部全部わたしが――長生きできないと宣告されたわたしが欲しがれば手に入った筈なのに、どうやらお星様の心は手に入らない様なのです。
だからわたしは、わたしの一等星である彼方の、一際うつくしい柘榴の色をした双眸に焦がれることしか出来ないのです。その双眸に唯一映りこむことのできる、幼馴染の御影にどうしようもない劣等感を抱きながら。
きらきらきらり。星が散る黄昏を宿した双眸と、柔らかい薔薇のにおいを纏った藤色の髪。口元を緩ませて笑う顔はお人形さんのよう。白磁の肌に薄く乗せられたチークは、大人っぽい雰囲気を連れていて、わたしはいつからかそんな御影を見上げることができなくなっていたのです。
住民は三人だけのちっぽけな世界のなかで、御影の手が、彼方の手のひらと触れ合う様子を見るたびに、わたしのちいさな心臓は軋む音をたてるのでした。居たたまれなくなるわたしの心臓に、いつしか毒へびがからみついておりました。嫉妬を意味する緑の眼と、エメラルドのリボンを身にまといながら、毒蛇は心臓の奥を這って、ちいさく嗤ってこう囁くのです。「それなら、いっそ」と。
それならいっそ、御影をなくしてしまえば。
彼方と、その傍でしあわせそうに笑っていた御影と、いつも不満げな顔つきのわたし。三人で作り上げた世界はうつくしかったのですが、どこまでも息苦しいところでした。だからこそ、どんな手段を用いても――たとえ三人を二人にしてまでも、誰かがこの世界の殻を破らねばならなかったのです。
⇒ 悪戯な世界に愛と弾丸を込めて/御影の話
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