タイトル:「星に願いを、月に祈りを」

 

「ねえ」
暖かそうな茶色のコートと、雪のように白い手。
はにかみながら僕に声を掛ける君。
「なあに?」
聞き返してみる僕はきっと嬉しそうなんだろうな。
「久しぶりだね。こういうの。」

 

溶け出した記憶が僕の心を締め付けた。
小さく笑う君は昔から泣き虫で。
僕の温もりが君に届いていたらいいなあ。
そう思いながら、いつも僕より一回り小さな君の手を取って夕焼け色のアスファルトを踏みしめて。
「さようなら」そう告げる君を少し寂しげに見送った昔の記憶。


「こうした方が温かいや。」
嬉しそうに笑った君がマフラーを僕に掛けた。

君の温もりと、僕の温もり、はんぶんこ。


銀砂のように撒かれた星屑が煌めく空の下。
温め続けたこの想いは。
意識するのも疎ましくて。
それでも君は僕に笑いかけてくるから。
でも、それを伝える言葉はころころと転がって。
だから。
今日だけは想いを伝えられるだけの勇気を。
どうか、僕に。


「あのさ…」

街灯のように温かい光を灯す星に願いを。
ノスタルジアを溶かした輝きを持つ月に祈りを。

 

 

 

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